「もしもし・・・」見慣れぬ明るく爽やかな声が携帯から響いた。
「結婚相談所 埼玉ですか?寂静さんの携帯で宜しいでしょうか?」
「はい、そうです」最近はHP業者の営業が多く用心深く対応していたが
「結婚のお相手探しをして下さる所ですよね?」にホッとした。
成婚された方への「成婚のカウンセリング」打ち合わせ後だったので、ゆっくり話せる。
成婚の笑顔に新たなやる気が湧いた時だ。
初めての電話とは思えない話し易さで、優しく温かい人柄の良さも伝わる。
高卒後、医科大学病院付属の高等看護学校に入学、寮生活で看護学を修得し
卒業後もそのまま大学病院に勤務を続けて今日に至ったと快活に話す。
2週間後に来社頂き、成婚までのプロセスのご説明後、入会を決め婚活は動き出した。
自分の人生を振り返り、熟慮の末に定年を待たずして早期退職を申し出たと言う。
結婚の機会はない事はなかったけれど、変則シフトを夢中にこなし
専門職のスキルアップに情熱を燃やすうちに、子供がほしいとの想いも薄らいだらしい。
役職となり病院の寮も豪華な部屋が与えられ、充実の毎日だったが温かい家庭を持ち
穏やかな生活も望んではいたらしい。ほとんどすべての診療科を経験し、看護学校の教職にも就いて
自分の子には恵まれなかったけど、沢山の患者さんとご家族との交流に、満足していると話す。
相次いで亡くなったご両親は、彼女の病棟に入院し手厚い看護の中で安らかに旅立ち
両親亡き後は弟が実家継いだ。
年末年始の長期の休みは、帰省すると弟家族に迷惑をかけるからと
予めビジネスホテルに予約をして過ごして来たが、それが少し切なかったと寂しそうに打ち明けた。
お相手への希望は「穏やかで優しい方」それだけの記載だった。
今まで出来なかった家事やお料理、普通の事をやってみたいと微笑み
出来たら趣味の華道と茶道も続けたいとも明るく話し、人柄の良さは写真からもにじみ
お見合いのお申し込みは一挙に舞い込んだ。
「折角のご縁ですから、順番にお逢いさせて頂きます」と
プロフィールを見比べ選り好みすることはなかった。そして間もなく
3回目にお見合いをした一つ年下の、穏和で優しい会社役員の男性と結婚を決めた。
多忙を極め神経を遣いながらの看護師時代は、実に充実していたから満足しているし
新たな人生を歩み始める事が出来て、とても幸せだと笑った。
来週、婚約指輪を決めに来社予定。職業柄、指輪も付けたことがなかったからと嬉しそう。幸せにあれ♪